敬礼偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
きょうらいげ/敬礼偈
釈尊に対する回向文。「敬礼天人大覚尊 恒沙福智皆円満 因円果満成正覚 住寿凝然無去来」。『大乗本生心地観経』一(正蔵三・二九四下)に出るが、説偈の最初の二句と二七・二八句を取って一つの偈文とした。仏を恭敬し礼拝する偈文で、計り知れない福徳と智慧は円満であり、修行はまどかに仏果を成就して、覚りを得、その命はとどまり去り来たることがないの意。涅槃会、灌仏会のほか正伝法前伝・授戒会や諸堂回向など釈尊が安置されている法要で用いる。『諸回向宝鑑』二(五オ)には「釈迦回向文」とある。『法要集』(大正一三年版)には「敬礼偈」が、作梵の代用として施餓鬼会などに節付で載せられている。また、声明の伽陀にあり(『魚山声明集』正蔵八四・八一四上)、浄土宗でも舎利講式(『浄土宗法要儀式大観』二)や地蔵講式(同)などで唱える。金戒光明寺の御忌法要では「前伽陀」として唱えられ、縁山流は『礼讃声明音譜』と『縁山声明集』に採譜(五線譜)されている。
【参照項目】➡敬礼二三
【執筆者:巖谷勝正】