福智
提供: 新纂浄土宗大辞典
ふくち/福智
福徳と智慧。善行による福徳は利他、悟りのための智慧は自利に属する。菩薩の修める行はこのいずれかにあたり、双方を完全に具えたものが仏とされる。『涅槃経』二七(正蔵一二・五二三上)には、六波羅蜜を能く修することによって智慧荘厳、福徳荘厳の二種の荘厳が具わり、仏となることが示されている。また、『徹選択集』下には「六波羅蜜を分って二と為す。前の五を福と名づけ、第六を智と名づく。此の福智二厳具足円満するを名づけて仏と為すなり。また六波羅蜜を俱に福と名づけ、俱に智と名づく。福即ち智、智即ち福なるが故なり」(聖典三・三一三/浄全七・一〇七上~下)と説かれ、六波羅蜜を前の五つ(布施、持戒、忍辱、精進、禅定)を福、第六(智慧)を智と分けている。しかし、六波羅蜜すべてが福徳でもあり智慧でもあるとし、そのため福徳と智慧が相即関係であるとしている。浄土宗で用いる『施餓鬼会宣疏』に「遠くは則ち二厳を成ぜしむ」とある二厳とは、この福智二種荘厳のことを指す。
【資料】『浄土宗法要集』上
【執筆者:宮田恒順】