灌頂
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんじょう/灌頂
頭上に神聖な水をそそぐこと。Ⓢabhiṣecanīまたはabhiṣekaの訳。古代インドで国王の即位、あるいは立太子のとき、四大海の水を取ってその頭上に水をそそぐ儀式であった。大乗仏教では、九地の菩薩が第十法雲地に至る時、諸仏が智水を頭上にそそぎ法王の位を受けるのと同じに譬えていい、受職灌頂という。密教では、灌頂を重要な作法とし、阿闍梨より法門を受ける儀式を秘密灌頂あるいは密灌という。密教の経軌には灌頂について多くの種類・呼び名があるが、普通行われているのは、真言宗では結縁・伝法の二灌頂、天台宗ではこれに蘇悉地を加えた三灌頂である。浄土宗では、香水を頭上にそそぎ身心を清めることを灌頂といい、帰敬式、得度式、剃度式、授戒会、五重相伝会、伝法道場等の際に、導師が散杖で洒水器もしくは水瓶の香水を「弥陀心水沐身頂」と唱え、受者の頭上に軽くあてることを灌頂洒水という。正伝法前伝・正授戒のときは灌頂してから入堂する。また、落慶式、晋山式等で稚児に行うのを稚児灌頂という。また、幡や塔婆を作法に従って水に流し、水死者無縁の死者の回向と魚類などを供養するのを流れ灌頂という。
【執筆者:廣本榮康】