六物
提供: 新纂浄土宗大辞典
ろくもつ/六物
僧尼が常に所持すべき六種類の生活必需品。僧伽梨(九条乃至二十五条袈裟)・鬱多羅僧(七条袈裟)・安陀会(五条袈裟)の三衣と鉢(三衣一鉢)、坐具(尼師壇)と漉水囊の六種をいう。漉水囊は、飲み水を漉すための袋で、飲むときに水中の虫を殺さないためのもの。修行者が蓄えることを許された最小限の生活具である。大乗仏教になると、その数が増えて「十八物」となった。頭陀のときや諸方に遊行するときに、必ず携帯しなければならないとされるもので、『梵網経』には、楊枝・澡豆(洗濯用の豆の粉)・三衣・瓶(飲料水や洗い水用の壺)・鉢・坐具・錫杖・香炉・漉水囊・手巾(手拭)・刀子(剃髪や裁衣用の小刀)・火燧(火打ち石)・鑷子(毛抜き)・縄床(縄を張ってつくった腰掛け)・経・律・仏像・菩薩形像(文殊・弥勒)の一八をいう(正蔵二四・一〇〇八上)。浄土宗の能化の葬儀のときには、棺前に六物をはじめ法衣・数珠・錫杖を向かって右側に、三部経・伝書・血脈譜を向かって左側に備える(『法要集』)。六物はひとまとめにして、奉書などで包み水引を結ぶ。
【資料】『大乗比丘十八物図』(仏全七三・威儀部二)
【執筆者:西城宗隆】