ラン・バン
提供: 新纂浄土宗大辞典
ラン・バン/[悉曇:raṃ]・[悉曇:vaṃ]
ラン字は悉曇文字・体文の中、[悉曇:ra](ra)字に空点を加えた[悉曇:raṃ](Ⓢraṃ)字であり、五大の中の火大の種字である。またバン字は体文中の[悉曇:va](va)字に空点を施した[悉曇:vaṃ](Ⓢvaṃ)字をさす。特に[悉曇:vaṃ]字は金剛界大日如来、法界虚空蔵、五大虚空蔵、勝軍地蔵、孔雀明王、太元師、月天等の種字であり、一切諸法の根本、五輪所成の法界塔婆を表すという。また五大中の水大(Ⓢvāri)、あるいは言説(Ⓢvāc)を表す[悉曇:va]字に大空または成菩提の義を表す空点を加え合成したもので、大悲心の義があり百六十心の煩悩垢を洗浄し、また自性離言説の義もあって大日法身の真実智を表すという。浄土宗では、洒水作法のときに悉曇の書法に基づき、洒水器の水中に[悉曇:raṃ]字・[悉曇:vaṃ]字を書いて香水を加持する。これは[悉曇:ra]字をもって水中の不浄を焼き、[悉曇:va]字の智水をもって一切衆生の心地に灑ぎ、菩提心の種子を生長させ、菩提樹王を増長することを意味する。
【執筆者:廣本榮康】