踊躍念仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ゆやくねんぶつ/踊躍念仏
一
時宗の僧尼の行う踊り念仏のこと。時宗の宗祖・一遍の生涯を描いた絵巻・国宝『一遍聖絵』四に、弘安二年(一二七九)の段に「をどり念仏は空也上人、或は市屋、或は四条の辻にて始行し給けり」とあり、踊り念仏は平安中期に空也が京都の市中で始めたものであると述べている。そしてその年(弘安二年)、一遍が信州善光寺参詣の途次に立ち寄った佐久(長野県)で、道俗が多く集まり共に踊ったのが縁となり、今日時宗の行儀となっている。踊躍念仏は毎月二三日(一遍忌日)に日中礼讃にひき続き、庭で踊り修行したので「日中の庭踊り」ともよばれた。九月一五日に行われている「薄念仏会」も庭踊りであるから踊躍念仏の一つといえる。今では堂内で踊るようになり、能の影響をうけて静かなものになっている。永仁年間(一二九三—一二九九)に成立した『天狗草紙』や『野守鏡』の中で批判されていることからも、当時、踊躍念仏が盛んだったことが考えられる。
【参考】大橋俊雄『踊り念仏』(『大蔵選書』一二、大蔵出版、一九七四)
【執筆者:長島尚道】
二
山形県天童市の仏向寺で行われている踊り念仏。仏向寺は、現在浄土宗に所属しているが、元々は時宗の一向が開いたとされる。現在では毎年一一月一七日に踊躍念仏に関する行事が行われている。内容は、九人の僧侶のうち一人が導師、八人が本堂内陣の両座に対座する。次第は浄土宗日常勤行式によって行われ、摂益文の次に踊躍念仏が入る。踊躍念仏には一二段あって、舎利念仏、和讃、行道念仏、モ上ゲブユリ、阿ハリブ引キ、陀下ゲブ上ゲ、重ネモ引キ、半伏セ念仏、足踏念仏、踊躍念仏、屈伸念仏、結式念仏の順に行われる。段が進むにつれて、鉦を鳴らして「なんまぁいだぁぶつだぁぶつだぁぶつ」と念仏に節や調子がついてくる。一連の踊躍念仏が終わると総回向偈が唱えられ退堂となる。昭和三一年(一九五六)に県の無形民俗文化財に指定され、同五五年に浄土宗の宗宝に指定された。
【参考】佛教大学民間念仏研究会編『民間念仏信仰の研究』(隆文館、一九六六)
【参照項目】➡仏向寺
【執筆者:齋藤知明】