初地発願
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょじほつがん/初地発願
法蔵菩薩は菩薩十地の階位のうち、初地において発願したとすること。『無量寿経』上では、法蔵菩薩は世自在王仏から二百一十億の諸仏国土の優劣を聞き、現に見た後に四十八願を発したことを説くが、法蔵菩薩がどの階位で発願したのかは示されていない。道光は『無量寿経鈔』二において、「その心寂静にして、志所著なく、一切世間、能く及ぶ者なし」(聖典一・二二四/浄全一・六)という『無量寿経』上の四十八願の直前に説かれる経文が、法蔵菩薩が初地において発願したことを顕わしているとする。すなわち、「その心寂静にして」とは、法蔵菩薩が二空の真理をさとり、あらゆる実体性を絶っていることを示し、「志所著なく」とは、すでに無明を断じていることを示し、「一切世間、能く及ぶ者なし」とは、今この時に初地に入り地前の境地を超えたことを示すとする。聖聡の『大経直談要註記』八、義山の『随聞講録』上二においても道光と同様の解釈がなされている。
【執筆者:勝崎裕之】