法蔵発心
提供: 新纂浄土宗大辞典
ほうぞうほっしん/法蔵発心
法蔵菩薩の発心。すなわち法蔵菩薩が、国王であったときに世自在王仏の前で菩提心を起こしたこと。これは『無量寿経』上に「仏の説法を聞きて、心に悦予を懐き、すなわち無上正真の道意を発し、国を棄て王を捐てて、行じて沙門となる」(聖典一・二二〇/浄全一・四)と説くことによる。この法蔵の発心を十地以前のもの(地前発心)とするか、十地以降のもの(地上発心)とするかについては異論がある。聖聡『徹選択本末口伝鈔』は、浄影寺慧遠の解釈を紹介し『無量寿経』には地前発心と地上発心の二重の発心が説かれているとし、これを一義と考えれば地上発心であると説くが、決して地前発心を否定しない。この浄影寺慧遠に基づく二重発心の理解は、観徹『無量寿経合讃』、義山『無量寿経随聞講録』にも見られ、「無上正真の道意を発し」(聖典一・二二〇/浄全一・四)を地前発心とし、『無量寿経』上「歎仏頌」直後に説かれる「無上正覚の心を発せり」(聖典一・二二三/浄全一・五)を地上発心と理解している。真宗の深励はこのような理解をせず、地前発心を発心総願、地上発心を選択別願と理解する。
【資料】香月院深励『浄土三部経講義』
【執筆者:石田一裕】