清泰国
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうたいこく/清泰国
漢訳(失訳)『阿弥陀鼓音声陀羅尼経』所説の阿弥陀仏の国土名。「清泰」とは清静で平安な状態を指し、いわゆる「極楽浄土」を承けた表現である。蔵訳には対応する国土名はない(梵本未発見)。この経典は阿弥陀仏の仏身仏土論において釈迦成道説に倣った応身説や、その国土の穢土相を説く点が注目される。特に道綽、懐感、迦才、基、智円らの著名な中国仏教家によって、応身応土説の根拠とされる。国土名、宮殿、宮殿の広さ、出自、父、母、妻、息子、奉事弟子(阿難)、智慧弟子(舎利弗)、神力精進具足弟子(目連)、魔王、提婆達多、声聞大衆の諸点から阿弥陀仏国土の諸相が説かれる。釈尊の娑婆世界に倣った国土観が大きな特徴である。インド起原の阿弥陀仏信仰が徐々に密教化していく時期(五~六世紀中頃)の記述である。ちなみに元・普度編『廬山蓮宗宝鑑』には上記の諸相が細説され、阿弥陀仏因位の時分、ある父母に三子あり、その中の次兄が世自在王仏に師事し法蔵菩薩となったと説かれる。後世においてもこの国土観について注目され議論が行われた。
【参考】小野田俊蔵「『阿弥陀鼓音声陀羅尼経』に基づく西蔵曼荼羅」(日仏年報五二、一九八七)、中御門敬教「〈阿弥陀鼓音声陀羅尼経〉の研究—阿弥陀仏信仰の密教への展開—」(『佛大紀要別冊 浄土教典籍の研究』、二〇〇六)
【執筆者:中御門敬教】