斎
提供: 新纂浄土宗大辞典
さい/斎
布薩(ⓈpoṣadhaⓅuposathaなど)に対応する漢訳語。仏教の教団で月に二回集まって、出家のものは戒律を読み上げて懺悔し、在家の人は一日一夜出家と同じ生活をし、八戒を守って教えを聞き、出家に食事を供養するのが布薩である。在家の人が心身を清浄に精進して殺生戒、偸盗戒、妄語戒、婬戒、飲酒戒、非時食戒(あるいは香油塗身戒)、歌舞観聴戒、高広大床戒の八戒をまもることから、これを八斎戒、あるいは八関斎という。『大方便仏報恩経』に「斎法は中を過ぎて食せずを体とす」(正蔵三・一五九下)と説くことから、出家に供養される食事をも斎、あるいは僧斎というようになった。「中を過ぎて食せず」つまり非時食でない食事である「時食」であるから、斎は「とき」「おとき」といわれる。また『梵網経』に「父母、兄弟、和上、阿闍梨の亡滅の日、及び三七日乃至七七日に亦まさに大乗経律を読誦、講説し、斎会して福を求むべし」(正蔵二四・一〇〇八中)とあることに基づき、忌日に僧を招いて食事を供養することも斎といい、この一日についても斎戒の一日であるという認識に基づいて「斎」といわれる。精進潔斎という言葉もこの布薩を言い表した言葉である。なお斎の本質は智顗の『請観音経疏』に「斎とは斉す也。身口業を斉す也」(正蔵三九・九七五中)とあるように、自らの行いを戒め正すことにある。
【資料】『優陂夷堕舎迦経』(正蔵一・九一二中)、『菩薩本縁経』(正蔵三・六九中)
【参考】龍牙興雲『持宝通覧』(教報社、一八九三)
【執筆者:大澤亮我】