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「願文」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:21時点における最新版

がんもん/願文

仏・菩薩本願をあらわした文。本願別願)には、釈尊の五百大願、薬師の十二大願など様々あるが、浄土教弘通に伴い、古来『無量寿経』に説かれる阿弥陀仏四十八願の文を指すことが多い。また四十八願の中、特に第十八念仏往生願文のみを指していう場合もある。


【執筆者:長尾隆寛】


法会の主催者である願主が、追善・算賀・逆修・造寺造像供養といった法会に際し、仏に対して述べる誓願を記した文章をいう。日本では、七世紀半ばの経典奥書仏像光背に刻された銘文等が願文の初期の例になる。多く作成されるようになるのは、九世紀半ばからであり、一〇世紀から一三世紀にかけて多くの願文が作成された。願主自らが記す場合もあるが、平安時代の願文は、願主より依頼を受けた文人官僚が願主の願意を汲んだ内容を起草し願主の認証を得る場合が多い。時代によって文章形式は異なるが、どのような信仰をもって、いかなる仏道修行を行い、誰をどのように救済悟りへと導くべきかという利他行について美文を用いて記されることは共通している。空海『遍照発揮性霊集』、菅原道真『菅家文草』の他、『本朝文粋』、大江匡房『江都督納言願文集』、『本朝続文粋』、『本朝文集』に収載されている願文が知られている。


【参考】工藤美和子『平安期の願文と仏教的世界観』(思文閣出版、二〇〇八)


【執筆者:工藤美和子】