「音階」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年9月17日 (月) 00:07時点における版
おんかい/音階
音楽において用いられる音の高さの順に配列したもの。英語scale、独語Tonleiter、Skala、仏語gamme、échelle、伊語scala、gamma。音高順に並べられた音は、一定の音程関係をくり返す形で並んでいる。そのくり返しの最少単位を音階という。その単位は八度オクターブとは限らず、四度・五度、またはオクターブ以上のものなどがあり、民族・時代・文化によって多様な種類がある。日本の伝統音楽といわれる声明・雅楽は中国古代音階論を基礎としている。中国の音階は三分損益法(日本では順八逆六の法)によって出された五音(宮・商・角・徴・羽)を基にした五音であるが、変徴・変宮を加えた七音音階であり(図1)、ギリシアのピタゴラス音階と同じである。
五音と十二律で六十調、七音と十二律で八十四調となるように膨大な音階が考え出された。日本では平安時代に音階を呂と律に分ける作業が行われ呂曲、律曲という音階が成立した(図2)。
中国の宮調を呂曲(呂音階)とし、律曲は宮調の徴を宮に置きかえた音階で、その違いは律曲の角の位置が半音高くなっている。半音の差であるが律曲の方が日本に適したといわれ、多く行われた。明治二八年(一八九五)、上原六四郎が『俗楽旋律考』にて、都節(陰旋法・半音を含む京・大阪・東京等都会の音楽)、田舎節(陽旋法・地方の民謡)の音階があることを発表した(図3)。謡曲・三味線音楽・箏曲・尺八楽俗曲・民謡等の「俗楽」に焦点を合わせた研究であり、その後の音階論の基礎となった。その特徴は都節・田舎節とも旋律が上行の場合に第五音が上がり嬰羽となり、下行のときは、都節では変羽となり、田舎節では正羽となる区別があることを説き、陽旋法は声明・雅楽の「律旋法」と同じとした。
昭和三三年(一九五八)、小泉文夫は『日本伝統音楽の研究』で、日本の音階の基本を「わらべうた、民謡」に求め、一オクターブではなく、四度の音程で音階を論じ、四種の基本音階があることを示した。第一種・民謡音階、第二種・都節音階、第三種・律音階、第四種・琉球音階の四種のテトラコルド(四度音階)である(図4)。民謡音階は雅楽などの外来楽以前からあったもので、もっとも基本的なものと考えられるとしている。
浄土宗の日常勤行式節付の偈文では、香偈・三宝礼・四奉請・歎仏偈・広開偈・礼竟文は上原六四郎の陰旋法(都節)にあてはまり、陰旋法で唱えている。六時礼讃の七字一句の「日中礼讃」「中夜礼讃」の本文は陰旋法、五字一句の「初夜礼讃」「後夜礼讃」「晨朝礼讃」と「日没礼讃」の本文は陽旋法(田舎節)で唱えており、また各礼讃の「後偈」および「無常偈」は陽旋法で唱えている。一唱一礼・三唱礼・三帰礼、盂蘭盆会・施餓鬼会の各偈文は陽旋法で実唱している。
【参考】「日本の音階」(『新訂標準音楽辞典』音楽之友社、一九九一)、小泉文夫『合本 日本伝統音楽の研究』(同、二〇〇九)、『日本の音楽〈歴史と理論〉』(国立劇場事業部、一九七四)
【執筆者:渡辺俊雄】