「四意趣」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:26時点における最新版
しいしゅ/四意趣
仏や菩薩が仏教に関心を寄せない人々を仏道に導くために行う四種類の教説のこと。玄奘訳『摂大乗論釈(世親釈)』(正蔵三一・三四六中)では四意趣として平等の意趣、別時の意趣、別義の意趣、補特伽羅の意楽の意趣を挙げている。平等の意趣とは、釈尊の成道を信用しない人々などに対して、近似した教えを通じて釈尊の成道を、さらには縁起の道理を信じるように導くこと。別時の意趣とは、仏道修行において怠惰な人々などに対して、何かしらの一行を提示することで仏道から退転することがないように諭し、やがては長期にわたる修行の末に無上菩提を獲得できるように導くこと。別義の意趣とは、法を聞くだけで満足してしまうような人々に対して、修学とともに修行が不可欠であると導くこと。補特伽羅の意楽の意趣とは、他人に施しの心が希薄な人々などに対して、本当に布施行が必要な相手のためにこそ布施を実践し、布施に対してはすでに満ち足りた相手に対しては仏道修行を説き示すなど、常に相手の要求を見極めた上で、しかもその相手を仏道修行へと導くようにと諭すこと。これら四意趣の中で、別時の意趣において仏名を称することと発願のみによる極楽世界への往生が取り上げられていることから、中国の隋代から唐代中期にかけて『摂大乗論』を中心に研究を進めていた人々から「極楽往生は次の生ではなく別時往生である」とする、いわゆる別時往生説が提示された。この別時往生説は阿弥陀仏信仰に対して極めて厳しい意見であり、道綽から懐感までの約一〇〇年もの間、中国浄土教はこの別時往生説に対して反論を続けることとなった。
【執筆者:柴田泰山】