「三縁の慈悲」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:24時点における最新版
さんえんのじひ/三縁の慈悲
慈悲について、その対象を三つの範疇に分類して取りまとめたもの。曇鸞『往生論註』上では世親『往生論』に説かれる「正道大慈悲 出世善根生」(聖典一・三二五/浄全一・一九二)の二句を解釈するなか、「慈悲に三縁有り。一つには衆生縁、是れ小悲、二つには法縁、是れ中悲、三つには無縁、是れ大悲なり」と指摘し、三つに分類した慈悲に大・中・小を配し、さらに大悲について「出世の善」とし、そこから安楽浄土が生じたのであるから浄土の根であり、それ故「出世善根生」というのであるとする(浄全一・二二四上/正蔵四〇・八二八下)。良忠の『往生論註記』二は衆生縁・法縁・無縁の三種の慈悲には横竪の義があるとして、竪については凡夫・菩薩・如来を配し「人執を断ぜざる凡夫、衆生有りと謂うが故に起こす慈は是れ生縁なり。人執を断ずる菩薩、法有りと謂うが故に起こす慈は是れ法縁なり。法執を断ずる仏界は法無しと謂うが故に起こすは是れ無縁の慈悲なり」とし、横については「三種の慈悲、共に仏果に約す」(浄全一・二七九上)とした。なお衆生縁・法縁・無縁の三縁の用例は『大般涅槃経』一五や『大智度論』四〇などをはじめ諸仏典に数多く見られる。
【参照項目】➡無縁の慈悲
【執筆者:袖山榮輝】