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「五智」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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ごち/五智

Ⓢpañca jñāna。大日如来五智法界体性智(法界の本性を明らかにする智慧)・大円鏡智(大円鏡のようにあらゆるものを顕現する智慧)・平等性智(すべての事象と自他の平等を観ずる智慧)・妙観察智(すべての事象の差別相を正しく観ずる智慧)・成所作智(自他のために為すべきことを成就する智慧)をいう。密教ではこの五智五大(地・水・火・風・空)と金剛界の五智如来(大日・阿閦あしゅく・宝生・阿弥陀・不空成就)に配する。この密教五智思想は唯識思想の四智・五法思想を密教的に発展させたものとされ、日本の空海にも多大な影響を与えた。聖者の五智。『成実論』一六・五智品には、法住智・泥洹ないおん智・無諍智・願智・辺際智を説く。法住智とは諸法の生起を知る智慧。泥洹智とは諸法の滅尽を知る智慧。無諍智とは他とは諍わない智慧。願智とは諸法中に障礙がない智慧。辺際智とは最上智を得て増損寿命等中に自在の力を得る智慧をいう。本際智・声聞智・縁覚智・菩薩智・仏智の五智


【参考】加藤精一「真言密教における五智について」(『密教学研究』一、一九六九)、同『密教の仏身観』(春秋社、一九八九)、長谷川岳史「密教における五智思想の成立に関する研究(2)」(『龍谷大学大学院紀要』一七、一九九六)


【参照項目】➡四智


【執筆者:北條竜士】


無量寿経』下に説かれる仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智の五種の仏の智慧のこと。五智の中で仏智を総智と位置付け、他の四智を別智と分類する。仏智とは仏の一切種智、不思議智とは仏力不可思議なる智、不可称智とは衆生には理解が及ばないほどの智、大乗広智とは一切衆生済度する智、無等無倫最上勝智とは何よりも最上なる智である。その五智について曇鸞は『略論安楽浄土義』において、「経の中に但だ疑惑不信と云いて、疑う所以の意を出さず。不了の五句を尋ねて敢えて対治を以て之を言わん。不了仏智とは謂わく仏の一切種智を信了することあたわず。不了の故に。故に疑を起こす。此の一句は総じて所疑を弁ず。下の四句は一一に所疑を対治す。疑に四意有り」(浄全一・六六八下正蔵四七・二上~中)と述べ、総智である仏智を疑うことがすべての疑惑の根本であり、それを対治するのが別智である他の四智であるとしている。また元暁は『両巻無量寿経宗要』や『遊心安楽道』において、不思議智は成所作智、不可称智は妙観察智、大乗広智は平等性智、無等無倫最上勝智は大円鏡智に対応させている。憬興きょうごうは『無量寿経連義述文賛』において、不思議智は大円鏡智、不可称智は平等性智、大乗広智は妙観察智、無等無倫最上勝智は成所作智と対応させ、元暁とは異なる理解を示している。


【参考】名畑応順『略論安楽浄土義講案』(東本願寺出版部、一九六六)


【執筆者:後藤史孝】