「龕」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年9月17日 (月) 01:17時点における最新版
がん/龕
仏像などを安置するための、厨子や壁面を掘り込んだ棚をいう。本来は厨子であるが、転じて棺・棺台を指すようになった。1石窟の壁面や仏塔などに、厨子をはめ込んだように棚を穿ち、その中に仏・菩薩などの像を浮き彫りしているところ。山西省雲崗、河南省龍門などの石窟はその好例。【図版】巻末付録 2厨子のこと。仏像を始め祖師像・経巻などを奉安する櫃。石窟寺院の龕にもとづき石または木材で厨子形を造り、これに扉をつけたものを仏龕と称した。3棺のこと。仏龕から転じて、遺体を納める棺を龕と称した。葬儀式には脇導師が棺前にむかって「鎖龕」「起龕」の作法を行うことがある。『諸回向宝鑑』三には、龕堂火屋の図を掲載し、龕前に龕前堂という仮屋を設け、火屋の四方に発心門・修行門・菩提門・涅槃門という鳥居のような四門を設けることを記している(六ウ・一三)。4棺台のこと。棺から転じて遺体をのせて運ぶ輿をも龕と称した。轅(舁き棒)のついた台と、これにのせる棺を覆う鳳輦形の上屋からなっている。台の周囲には四門のついた小板の忌垣を施すこともある。これを俗に蓮台ともいう。寝棺には白木の輿を用い、立棺・陶瓶は輦台にのせて天蓋で覆うことで輿に似せ、また駕籠を用いて棺を運び、早桶には棒で担いだという。この龕を中心に墓地まで葬列したが、火葬の普及と霊柩車の登場により用いられなくなった。
【参考】五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)、藤井正雄『お葬式いま・むかしQ&A』(「なむブックス」一〇、浄土宗、一九九八)、山田慎也『現代日本の死と葬儀』(東京大学出版会、二〇〇七)
【執筆者:西城宗隆】