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提供: 新纂浄土宗大辞典

がん/龕

仏像などを安置するための、厨子ずしや壁面を掘り込んだ棚をいう。本来は厨子であるが、転じて棺・棺台を指すようになった。石窟の壁面や仏塔などに、厨子をはめ込んだように棚を穿うがち、その中に仏・菩薩などの像を浮き彫りしているところ。山西省雲崗うんこう、河南省龍門などの石窟はその好例。【図版】巻末付録 厨子のこと。仏像を始め祖師像・経巻などを奉安するひつ石窟寺院の龕にもとづき石または木材で厨子形を造り、これに扉をつけたものを仏龕と称した。棺のこと。仏龕から転じて、遺体を納める棺を龕と称した。葬儀式には脇導師が棺前にむかって「鎖龕さがん」「起龕きがん」の作法を行うことがある。『諸回向宝鑑』三には、龕堂火屋の図を掲載し、龕前に龕前堂という仮屋を設け、火屋の四方に発心門・修行門・菩提門・涅槃門という鳥居のような四門しもんを設けることを記している(六ウ・一三)。棺台のこと。棺から転じて遺体をのせて運ぶ輿こしをも龕と称した。ながえき棒)のついた台と、これにのせる棺を覆う鳳輦ほうれん形の上屋うわやからなっている。台の周囲には四門のついた小板の忌垣いがきを施すこともある。これを俗に蓮台ともいう。寝棺には白木の輿を用い、立棺・陶瓶は輦台にのせて天蓋で覆うことで輿に似せ、また駕籠を用いて棺を運び、早桶には棒で担いだという。この龕を中心に墓地まで葬列したが、火葬の普及と霊柩車の登場により用いられなくなった。


【参考】五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)、藤井正雄『お葬式いま・むかしQ&A』(「なむブックス」一〇、浄土宗、一九九八)、山田慎也『現代日本の死と葬儀』(東京大学出版会、二〇〇七)


【執筆者:西城宗隆】


龕▢4