ところで、[[大乗仏教]]において[[菩提心]]は[[修行]]の根本であるから、『[[観経]]』では「かの国に生ぜんと欲さん者は、まさに[[三福]]を修すべし」（聖典一・二九一／[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J01_0039 浄全一・三九]）として[[三福]]を説く中で「[[菩提心]]を発すこと」を[[浄業]]の[[正因]]の一つとし、[[上品]][[下生]]の段では「ただ無上[[道心]]を発す」（同三〇八／同四八）といい、[[善導]]は『[[観経疏]]』巻頭で「道俗の<ruby>[[時衆]]<rt>じしゅう</rt></ruby>等<ruby>各<rt>おのおの</rt></ruby>無上の心を発せ」と勧めて「同じく[[菩提心]]を発して、[[安楽]]国に[[往生]]せん」（聖典二・一五九～六一／[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J02_0001 浄全二・一上]～下）と締めくくっている。このことは道俗の[[大衆]]に対して[[穢土]]を厭い離れ[[浄土]]を欣い求めることを促し勧めるためであると理解されるので、特に[[浄土教]]においては[[菩提心]]とともに<ruby>厭欣心<rt>えんごんしん</rt></ruby>が同意語的に理解されることにもなる。[[良忠]]は『[[伝通記]]』玄義分記一で、まず[[菩提心]]を「[[聖道]]の[[菩提心]]は[[穢土]]の中において願を発し[[穢土]]の中において行を立てる故に難行なり。[[浄土]]の[[菩提心]]は願は[[穢土]]に在りて行は浄刹に在る故に易行なり」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J02_0085 浄全二・八五上]）といい、さらに「[[菩提心]]を総[[安心]]と為し[[至誠心]]等を[[別安心]]と為す」（同八六下）というように、[[菩提心]]を総[[安心]]、[[至誠心]]等の[[三心]]を[[別安心]]と呼称する。[[往生]]のための[[正因]]に関していえば、「[[三心]]は遍く[[九品]]に通じ、[[菩提心]]は<ruby>局<rt>かぎり</rt></ruby>て[[上品]]に在り」であり「[[三心]]は是れ我等が分なり」（同八七上）なのである。[[聖冏]]は『<ruby>[[糅鈔]]<rt>にゅうしょう</rt></ruby>』四で「遠く仏果を求るを[[菩提心]]と名づけ近く[[往生]]を願ずるを[[三心]]と名けたり。[[菩提心]]を総と云い[[三心]]を別という事是一往なり」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J03_0110 浄全三・一一〇下]）とし、「[[三心]]を教ゆることは[[去行]]を調熟せんが為なり。然れば則ち[[往生]]を得ん為に別して所修の[[去行]]に付いてまさに[[往生]]の<ruby>[[意楽]]<rt>いぎょう</rt></ruby>を発すべし。[[別安心]]と名くるの則んば[[三心]]なり」（同一一一上）といい、[[往生]][[浄土]]の行である[[口称]][[念仏]]（[[去行]]）を調い熟させるために心[[行相]]応の[[三心]]が[[別安心]]として説明される。そして「今云う、安とは安置なり。心とは心なり。謂く、念を所求[[所帰]][[去行]]の三に置くを[[安心]]と云うなり」（同一一一下）という。また『[[和語灯録日講私記]]』一では「喩えば清水へ参らんと思うは[[安心]]なり。一足一足行きて足を運ぶは[[起行]]なり。[[安心]]とは安置の義にして置くという義なり。置くと云うは三の置き様有り、所求[[所帰]][[去行]]の三の置き様なり」（[http://jodoshuzensho.jp/jozensearch_post/search/detail.php?lineno=J09_0687 浄全九・六八七]）という。