香
提供: 新纂浄土宗大辞典
こう/香
一
におい・かおりのこと。十二処・十八界の一つで、鼻根の対象であり、鼻識によって認識されるもの。Ⓢgandha。アビダルマ論書では香は三種あるいは四種に分類される。三種に分類される場合は①好香、②悪香、③平等香となり、四種の場合は①好香、②悪香、③(平)等香、④不(平)等香となる。これら三香・四香の定義については論書によって異なり一定しない。また香は欲界のみに存在するもので色界・無色界には存在しないとされる。
【執筆者:石田一裕】
二
五種供養、六種供養、十種供養の一つ。香は「仏の使者」ともいわれ、香を焚いて献ずることは献香といわれ、最上の供物とされる。香には大別すると焼香と塗香があり、焼香は焚いて用いるもので、塗香は身に塗って用いるものである。また焼香には線香や丸香といった種類がある。香を焚く(焼香)ことやその身に塗る(塗香)ことは信心を清浄にする、諸仏を奉請奉送する、諸仏を供養するという三つの意味がある。その回数は、焼香伝によれば三回薫香するのは三毒煩悩(貪・瞋・痴)を断つことを表し、二回薫香するのは戒香・定香を表し、一回薫香するのは一心不乱の意念を表す。
【参考】『浄業信法訣』四(『伝灯輯要』一〇二五、浄土宗出版事業協会、一九七五)
【執筆者:斉藤隆尚】