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閼伽

提供: 新纂浄土宗大辞典

あか/閼伽

本尊または墓前に供える浄水。Ⓢarghaの音写。功徳水と訳す。阿伽とも書き、阿伽水、阿伽の水ともいう。閼伽は、塗香ずこう華鬘けまん焼香飯食ぼんじき灯明と共に本尊献供する六種供養の一つ。観随『蓮門六時勤行式』には、「香華灯燭阿伽茶湯は時剋を論ぜず供すべし。阿伽は井花水(朝最初に汲むを云)を善とす」(四ウ、安政四年〔一八五七〕)とあり、元日・春分の朝に汲む若水はこれにあたる。知恩院修正会では、円山境内吉水の若水(安養寺・慈鎮和尚阿伽の水)を汲み、仏前および開祖御影像前等に御茶湯を献じていた(『知恩院史』五五六)。『渓嵐拾葉集』二二には、閼伽は霊地の水、明星東下の地を用いるべきものとしている(正蔵七六・五七二下)。『倭名類聚鈔』には、「雑香を蒸煮して、その汁を以て仏に供養する」とあり、香を煮出した香水をいう。閼伽を汲む専用の井戸を閼伽井といい、東大寺二月堂の若狭井が有名。この閼伽井の建物、または閼伽棚のための一室を閼伽井屋といい、當麻寺曼陀羅堂には屋根が片流かたながれで木瓦葺の閼伽棚(閼伽井屋)がある。閼伽を汲む桶を閼伽桶といい、これから転じて墓参用の桶をもいう。閼伽棚は仏前に供える浄水や花と仏具等を載せる棚。また閼伽を入れておく容器、転じて仏前に供養する器具一般を閼伽の具という。閼伽を盛る器を閼伽器(六器の一つ)といい、その閼伽の水に浮かべた花を閼伽の花という。石塔の水鉢に花を浮かばせる作法はこれによる。


【資料】『渓嵐拾葉集』『方丈記』、『源氏物語』幻


【執筆者:西城宗隆】


閼伽井屋(『法然上人行状絵図』巻14・知恩院蔵)