門
提供: 新纂浄土宗大辞典
もん/門
一
教理を表す言葉として「門」の字が用いられる。良忠『決疑鈔』一に「先ず能詮教相の門戸を知て、然して後に所詮出離の要路を修行す」(浄全七・一九〇下)あるいは「俱に門と名るは、出入の義也。謂く火宅を出て、涅槃に入る故なり」(浄全七・一九一下)とあるように、釈尊の教えの一々は、みな悟りに至るためのそれぞれの入り口であるととらえ、門にたとえて表される。仏教教理の総称を八万四千の法門と言い、それぞれの宗派においても、教義ごとに門の字は多く用いられる。浄土宗においては『選択集』一の「道綽禅師聖道浄土の二門をたてて、しかも聖道をすてて、正しく浄土に帰するの文」(聖典三・九七/昭法全三一一)のように、教判を表す用語として聖道門と浄土門が用いられる。他にも自力門と他力門、定散両門など、各々の立場や見解から教理のあり方を明らかにする場合に門を用いて表現される場合が多い。また「五念門」のように教理の分類、区別を明かす場合にもそれぞれに門を付けて表される。
【参照項目】➡聖道門・浄土門
【執筆者:兼岩和広】
二
宗派の別称として宗門と言う。優れた師や教えを中心に形成され、一つの法門によって宗旨を立てた集まりを、同じ入り口に集う仲間という意味で門の字を用いる。また、この宗門の長を門主と呼び、さらに、宗門に属するものを門下の徒弟という意味で門徒、門弟と言う。主に浄土真宗においては信奉者を門徒と呼ぶ。
【執筆者:兼岩和広】
三
境内の様々な領域の出入り口となる建物のこと。門自体で祭礼や法会が行われることもあり、また格式を象徴するなどの多様な役割をもつ。その名称は寺院ごとに様々で、方位や立地(東門・表門・脇門など)、安置する像(二王門・随身門など)、色彩(赤門・黒門)などに従った幅広い名称や分類方法がある。広く行われる分類方法として建物の形式によるものがあり、例えば唐門、楼門、薬医門、高麗門、冠木門、四脚門、八脚門などは建築的な特徴を示す名称である。
【執筆者:中村琢巳】