観念法門
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんねんほうもん/観念法門
一巻。善導の著作(五部九巻)の一つで、善導の著作活動の中でも初期の撰述とされている。写本として誓願寺本と杏雨書屋所蔵本があり、版本として叡山文庫所蔵本、龍谷大学所蔵本、専修寺所蔵本、明暦二年版、万治二年版、元禄六年版、元禄七年版などがある。冒頭の題名を「観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門」とし、巻末の尾題を「観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門経」としている。内容は前半、五種増上縁義、後半に大別することができる。前半はまず『観経』と『観仏三昧海経』を引用しながら観仏三昧の具体的な実践方法を明かし、次に『般舟三昧経』を引用しながら念仏三昧の具体的な実践方法を明かし、さらに入道場および臨終行儀に関して解説を行っている。五種増上縁義は『無量寿経』『観経』『阿弥陀経』『般舟三昧経』『十往生経』『浄度三昧経』を典拠として、願往生人に対する無上なる五種の功徳として、滅罪・護念・見仏・摂生・証生という五種の増上縁について言及している。後半は道場内懺悔発願法として『十往生経』『般舟三昧経』『観仏三昧海経』『大集経』『木槵経』を引用して、懺悔について詳細な説明を行っている。なお本書は原本『観念法門』と「五種増上縁義」が善導自身によって合冊された可能性が考えられ、原本『観念法門』には道綽『安楽集』の影響はあまり見受けられないが、五種増上縁義には引用経典、増上縁の語義、第十八願文の引用、懺悔、滅罪などの項目に『安楽集』からの影響を色濃く見ることができる。あるいは善導は『安楽集』と何らかの接点を持つ以前に既に原本『観念法門』を撰述しており、その後『安楽集』の影響下において「五種増上縁義」を撰述したものとも推測できる。末書として、『観念法門私記』二巻(良忠・浄全四)をはじめ、『観念法門観門要義鈔』三巻(証空・西全四)、『観念法門要略記』一巻(入阿)、『観念法門管見鈔』二巻(導空)、『観念法門秘鈔』三巻(行観)、『観念法門私用心鈔』四巻(智円)、『観念法門叢林鈔』一巻(恵空・真宗大系一〇)、『観念法門略解』二巻(道振・真宗全書一五)、『観念法門講録』三巻(観順)、『観念法門甄解』五巻(僧鎔)など多数ある。
【所収】浄全四、『浄土宗選書』、正蔵四七、続蔵二、真宗聖典、『真宗聖教大全』中、『七祖聖教』六
【参考】柴田泰山『善導教学の研究』(山喜房仏書林、二〇〇六)
【執筆者:柴田泰山】