五種増上縁義
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごしゅぞうじょうえんぎ/五種増上縁義
一巻か。善導撰。七世紀中ごろの成立。善導の初期の著作と考えられる『観念法門』の一部。ただし『観念法門』の本文中に「依経明五種増上縁義一巻」(浄全四・二二七上)および「五種増上縁義竟」(浄全四・二三五下)とあることから、古来、『観念法門』とは別本として存在していた可能性が指摘されている。五種増上縁義は最初に六部往生経として、①『無量寿経』②『十六観経』③『四紙阿弥陀経』④『般舟三昧経』⑤『十往生経』⑥『浄度三昧経』の六経典を提示した上で念仏実践者が得る五種の大功徳として、①滅罪増上縁②護念得長命増上縁③見仏増上縁④摂生増上縁⑤証生増上縁を提示している。この五種の増上縁のことを説示する箇所が「五種増上縁義」である。また「五種増上縁義」は、「増上縁」の定義や、『文殊波若経』『般舟三昧経』『月灯三昧経』『惟無三昧経』『譬喩経』『十往生経』の引用などに道綽の『安楽集』との密接な関係を見ることができることから、善導が『安楽集』を入手した後に撰述したものと考えられる。
【所収】浄全四、正蔵四七(いずれも『観念法門』の一部)
【執筆者:柴田泰山】