五部九巻
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごぶくかん/五部九巻
現存する善導の著作の総称。『観経疏』四巻、『法事讃』二巻、『往生礼讃』一巻、『観念法門』一巻、『般舟讃』一巻という五部の著作が現存して、各々の巻数を合して九巻となるため「五部九巻」という。このうち主として教義を明かした『観経疏』を「解義分(教相分)」とよび、行儀作法を明かした『法事讃』『往生礼讃』『観念法門』『般舟讃』の四部を合わせて「行義分」と通称する。義山『翼賛』には「『法事讃』二巻、『観念法門』、『往生礼讃』、『般舟讃』、各一巻を造て修行の方軌を示し給えり。都て四部五巻、これを行儀分と名づく。前の四帖疏を解義分と云う。已上、合して五部九巻と総称するなり」(浄全一六・九五五下)とある。五部九巻の成立前後については、良忠『法事讃私記』に「観経疏は経の文義を解す、先に之を撰すべし。余の四部は其の行儀を明かす、後に之を集むべし。解行の次第、理必ず然るが故に、四部の中に就いて前後定め難し…(先師口伝)」(浄全四・三三下)とあり、『観経疏』が先に、残りの四部が後に成立したとする。ただし、四部の中の成立順序は決定しがたいという。良忠以後、現代に至るまでその思想内容や体裁さらには韻律などの観点も含めて、五部九巻の成立順序に関する様々な仮説が提示されている。
【参考】柴田泰山『善導教学の研究』(山喜房仏書林、二〇〇六)、齊藤隆信「概観 法然仏教への道程としての善導研究」(佛教大学総合研究所編『法然仏教とその可能性』法蔵館、二〇一二)
【執筆者:工藤量導】