要義問答
提供: 新纂浄土宗大辞典
ようぎもんどう/要義問答
法然述。成立年不明。念仏を修する者の心得を問答体で示したもの。『西方指南抄』下末、『和語灯録』三所収。ただし『西方指南抄』本は無題。テキストとしては『和語灯録』本の方が良質。前文と浄土宗の「要義」に関する一三の問答、および結尾からなる。全体にわたり問答の前後関係が緊密で、体系的といえる。前文では道心薄く病気がちなことを嘆く質問者に、幸いにも仏教に巡り逢えたのであるから、六道輪廻からの出離を目指すべきであると説く。それに続く各問答の内容は以下の通り。①道心薄くとも出家したことは貴い、②仏道には聖道・浄土の二門があり、随意に選べ、③ただし凡夫は浄土門を選ぶべし、④兜率往生よりは凡夫に縁深き極楽往生を目指せ、⑤極楽往生のためには一向に念仏すべし、⑥弥陀・釈迦・善導等が勧めていない余行をまじえてはいけない、⑦浄土の経論列挙、⑧心には三心を持つべし、⑨三心を具えたなら、それが「一心不乱」となる、⑩行のあり方としては四修が重要、⑪自力を恃むと魔縁に妨げられる、⑫一念で八十億劫の生死の罪を滅す、⑬念仏は実践可能な称名であるべし。なお、第六問答での、浄土門は「教を簡ぶにはあらず、機を料らうなり」(聖典四・三八二/昭法全六一九)という一文、第八問答で『観経』の三心と『無量寿経』第十八願の「至心・信楽・欲生我国」と『阿弥陀経』の「一心」を同趣旨と述べる点、および結尾で極楽往生後に修すべき種々の行を挙げている点などが注目される。
【所収】聖典四、昭法全
【参考】岸信宏「要義問答に就て」(『仏教文化研究』一二、一九六三)
【執筆者:安達俊英】