兜率往生
提供: 新纂浄土宗大辞典
とそつおうじょう/兜率往生
弥勒の浄土である兜率天に往生すること。兜率上生ともいう。『弥勒上生経』には、精勤にして諸々の功徳を修し、念を仏の形像に繫けて弥勒の名を称する者は、命終ののち兜率天に往生することを得て、また弥勒に値遇し、当来の弥勒に随って閻浮提に下生することを得て、その説法の会座に到り、遂に無上菩提を証得す、とある。兜率往生の思想は阿弥陀仏国思想よりも古く、インドには兜率天に生まれようと願うものが多い。中国においては、東晋以来兜率往生の信仰がさかんであって道安・玄奘・基らがあり、日本においては尊意・貞慶・明恵・宗性らが有名な兜率願生者である。日本の歴史上では阿弥陀仏信仰が盛んになってから、弥勒信仰に阿弥陀仏の浄土教信仰が取って代わるようになったことも事実である。
【参考】平岡定海『日本弥勒浄土思想展開史の研究』(大蔵出版、一九七七)、金子寛哉『「釈浄土群疑論」の研究』(大正大学出版会、二〇〇六)
【執筆者:金子寛哉】