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「逆修説法」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:22時点における版

ぎゃくしゅせっぽう/逆修説法

一巻。法然述。中原師秀なかはらのもろひでに請われて初七日から六七ろくしち日にいたる六会の導師として法然が行った説法の筆録。なお七七しちしち日の説法感西が行っている。師秀は遵西じゅんさいの父で少外記しょうげきの役職にあった。この法会阿弥陀仏来迎引接らいこういんじょう像を刻み、浄土五祖影像ようぞうを図し、その開眼供養にあわせて自身の死後における冥福を祈る仏事である逆修を行うにあたって行われた。初七日には仏像の新造にちなんで仏身論真化しんけ二身、造来迎引接像は決定往生の業因、来迎の願意、来迎による臨終正念来迎像は先達、また魔事を対治す)と、「浄土三部経」のなかの『無量寿経』『阿弥陀経』の大意(浄土宗所依経典、宗名師資相承血脈浄土宗機教相応の法門を含む)を説く。二七にしち日には『観経』の定散二善十六観を概説し、最後に念仏往生諸行往生よりすぐれている点について六義(選択本願光明摂取弥陀目説、釈迦付嘱、諸仏証誠法滅往生)を説く。三七さんしち日には阿弥陀仏功徳名号功徳—光寿の二義、寿命無量の一願に自余の諸願を摂持)と、『無量寿経』(根本論)・『阿弥陀経』(『龍舒浄土文』所収の襄陽石刻『阿弥陀経』にふれる)について説く。四七ししち日には諸仏の功徳(法報応三身、とくに釈迦仏の功徳を例証として挙げる)、阿弥陀仏の別徳(とくに白毫一相をもって最勝とする)、『観経』所説の三福とを説く。五七ごしち日には依正二報功徳、「衆生をして浄土往生せしめん」とする『無量寿経』の意図、浄土五祖祖師真影を図する意義、浄土五祖)とを説く。六七ろくしち日には無量寿仏功徳(通号と名号)と『観経』の大意(二門・二道判、付属弥陀名号、正雑二行、五番相対百即百生)とを説く。

略称として『浄土述聞鈔』『浄土述聞口決鈔』に記される「師秀草」、および『東宗要第一見聞』三に記される「師秀説法草」を挙げることができる。『逆修説法』は越智専明おちせんみょうの『浄土宗年譜』、藤本了泰の『浄土宗大年表』によれば建久五年(一一九四)の説法としているが、その典拠とする『漢語灯録』が何本によるか不明であるため、確実な成立年時ははっきりしない。本書は東大寺における三部経講説以後、『選択集』撰述以前の説法とみられる点において、法然教学成立過程上の重要資料ということができる。また本書の流伝に関し『黒谷上人語灯録』の編集者道光は巻第八の末尾に「ただし多本を集るに、あるいは真字あり、あるいは仮字あり。いまだいずれが正ということを知らず。今しばらく真字の本についてこれを集む。すべからく正本を尋ぬべし」(昭法全二七三)と付記している。ここにいう仮字は『西方指南抄』上・末(高田専修寺蔵)に集録されている「法然聖人御説法事」を指し、また真字とは『漢語灯録』七、八に集録されたものを指すが、このほか、和漢混合体のものに『師秀説草』(京都法然院蔵)と『無縁集』(安土浄厳院蔵)とを挙げることができる。このなか、専修寺蔵本は『親鸞聖人全集』輯録篇一(同刊行会編)、『古本漢語灯録』本(善照寺本)は『仏教古典叢書』、『無縁集』は伊藤祐晃浄土宗史の研究』(乾)、『師秀説草』は『浄土宗典籍研究』に収載されている。また各種異本校合としては『昭法全』があり、また『真宗聖教全書』(拾遺部上)、宇高良哲『〈逆修説法〉諸本の研究』を挙げることができる。「逆修説法」の表題について、『西方指南抄』よりも前に撰述された『決疑鈔』のなかに「外記大夫入道五十日逆修説法詞」(浄全七・二九四下)という書名が見える。これが現在確認できる「逆修説法」の最も古い書名であるが、内容はわからない。 『西方指南抄』所収の『法然聖人御説法事』は書誌学的にも内容的にも現在最も信頼できる史料であるが、原本『逆修説法』の抄出本であり、全体を伝えていない。その点『古本漢語灯録』所収の『逆修説法』は、書誌学的には問題があるが、『法然聖人御説法事』と内容がよく合致しており、比較的原本『逆修説法』に近いものと考えられる。しかし『西方指南抄』『古本漢語灯録』は法然語録を中心に編纂されているため、感西導師を勤めた七七日の記載がない。おそらく原本『逆修説法』には、「外記大夫入道五十日逆修説法詞」という書名が残存することから推定しても、七七日の記載があったものと考えられる。『無縁集』『師秀説草』には七七日の記載がある。しかしこの七七日の記載が原本『逆修説法』通りであるかどうか疑問が残る。『無縁集』は浄土宗の書籍としては珍しい天台宗の記家の手になる写本と考えられ、鎌倉時代の字体の名残りをとどめるものである。内容的には『師秀説草』に近い。浄厳院本『逆修説法』は隆尭の自筆本である。半分しか現存していないものの、恵空の古本『逆修説法』の書誌学的欠点を補うのに貴重なものである。『師秀説草』は形式的には本来もっとも原本『逆修説法』に近いものであったと推測される。しかし現存の法然院本『師秀説草』は書誌学的にも、内容的にもかなり手が加えられているようであり、現在の史料評価は古本『逆修説法』より劣るものと考えられる。古本『逆修説法』は、書誌学的には写本も新しく、しかも必要以上に権威づけがなされているように思われるが、内容的には『法然聖人御説法事』に近く、書誌学的欠点を浄厳院本『逆修説法』を介在させて補うと、法然に関する「逆修説法」としては内容的に優れたものということができるであろう。現在『浄全』九に所収されている『逆修説法』の底本は正徳五年(一七一五)義山によって木版で刊行された『漢語灯録』(書林芳野屋刊)七、八である。これは『〈逆修説法〉諸本の研究』の中で、恵空本の同書と対比されているように、かなり文章の出入りがあり、今後の『逆修説法』の研究は義山本(新本)ではなく、恵空本(古本)によって検討されるべきである。


【所収】浄全九、正蔵八三


【参考】『浄土宗典籍研究』(山喜房仏書林、一九七五)、宇高良哲編著『〈逆修説法〉諸本の研究』(文化書院、一九八八)


【執筆者:宇高良哲】