操作

五番相対

提供: 新纂浄土宗大辞典

ごばんそうたい/五番相対

往生行として正行が勝れていることを明かした五つの相対法然が『選択集』二において説示した①親疎対しんそたい近遠対ごんのんたい無間有間対むけんうけんたい④不回向回向対⑤純雑対じゅんぞうたいのこと。これは正助二業と雑行の違いを示したものであり、浄土往生にとって最も勝れた行であることを明らかにした論法で、行的な観点を踏まえて明示する法然の判断、すなわち教相判釈の一種である。①親疎対は正助二業を修することで阿弥陀仏衆生の関係が親しくなり、雑行では疎遠になることである。これは〈阿弥陀仏念仏衆生〉の対話的間柄といえるものである。②近遠対とは、正助二業を修する者には、仏にまみえたい願いに応じて仏が目前に現前するという意味で「近」であり、雑行の者はそうならないから「遠」とされる。③無間有間対とは、無間とは衆生憶念が隙間なく断絶なく阿弥陀仏において有ること。その否定態が「有間」という。④不回向回向対とは、不回向とは正助二業は自然往生の業となり、往生のために回向を用いる必要がないこと。雑行回向を用いることによってはじめて往生の因と成るから「回向」とされる。⑤純雑対とは、「純」は正助二業が西方極楽浄土往生に限定される行であり、それ以外の雑行極楽往生するための行ではないため「雑」とされる。この五つの中で第一・第二・第四は『観経疏』を典拠として各概念の規定をしている。また、第一・第二・第三は「阿弥陀仏において」のこととして親・近・無間であることが分かる。第四・第五は正助二業のもつ性格そのものの観点であると言えよう。このような正行雑行との対比は、正行を構成する五種のなかで称名正行正定業とする法然の教えにおいて、阿弥陀仏による選択本願念仏こそが阿弥陀仏極楽浄土往生するためには最も勝れており、一方で、雑行阿弥陀仏浄土往生することができる行とはならないから劣であるということを明確にする。法然五番相対における五つの対比概念を通して勝劣難易の分判を行っている。


【参考】石井教道『選択集全講』(平楽寺書店、一九五九)、藤堂恭俊『選択集講座』(浄土宗、二〇〇一)、藤本淨彦「法然の『五番相対』の論理—善導浄土教の主体的受容—」(『法然浄土教の宗教思想』平楽寺書店、二〇〇三)


【参照項目】➡五種正行


【執筆者:藤本淨彦】