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黒谷上人語灯録

提供: 新纂浄土宗大辞典

くろだにしょうにんごとうろく/黒谷上人語灯録

漢語灯録』一〇巻、『和語灯録』五巻、『拾遺黒谷上人語灯録』三巻の計一八巻から成る。道光編。文永一一年(一二七四)—同一二年成立。本書は道光法然の真撰の編著・法語消息等を後世に遺そうとの一念によって蒐集しゅうしゅう編纂したもの。漢文体のものを所収する『漢語灯録』、和文体のものを所収する『和語灯録』、追加のための拾遺篇といえる『拾遺黒谷上人語灯録』とに分けられる。

[『漢語灯録』]

漢文体のもの二二篇を所収する。所収遺文は順番に巻一には『無量寿経釈』、巻二には『観無量寿経釈』、巻三には『阿弥陀経釈』『浄土三部経如法経次第』『如法念仏法則』、巻四・五には『選択本願念仏集』、巻六には『往生要集釈』『往生要集略料簡』『往生要集料簡』『往生要集詮要』、巻七・八には『逆修説法』、巻九には『類聚浄土五祖伝』『善導十徳』、巻一〇には『浄土宗略要文』『浄土初学抄』『没後遺誡文もつごゆいかいもん』『七箇条起請文』『送山門起請文』『遣北陸道書状』『遣兵部卿基親之返報』『基親取信信本願之様』『遣或人之返報』がそれぞれ所収されているが、このうち『如法念仏法則』『選択本願念仏集』については、現在いずれの系統の記述にも確認できない。

[『和語灯録』]

和文体の法語消息類を編集したもの。巻一には『三部経釈』『御誓言の書』『往生大要抄』、巻二には『念仏往生要義抄』『三心義』『七箇条起請文』『念仏大意』『浄土宗略抄』、巻三には『九条殿下の北政所へ進ずる御返事』『鎌倉の二位の禅尼へ進ずる御返事』『要義問答』『大胡太郎実秀へつかわす御返事』、巻四には『大胡の太郎実秀が妻室のもとへつかわす御返事』『熊谷の入道へつかわす御返事』『津戸の三郎入道へつかわす御返事』『黒田の聖人へつかわす御文』『越中国光明房へつかわす御返事』『正如房へつかわす御文』『禅勝房にしめす御詞』『十二問答』『十二箇条問答』、巻五には『一百四十五箇条問答』『上人明遍との問答』『諸人伝説の詞』の計二四篇の遺文を所収している。

[『拾遺語灯録』]

道光は拾遺篇『拾遺黒谷上人語灯録』の編集をもって『黒谷上人語灯録』の完結としている。『拾遺黒谷上人語灯録』は元亨版の内題の下部に「上漢語、中・下和語」と註記される通り、いわゆる『拾遺漢語灯録』一巻と『拾遺和語灯録』二巻とから成っている。このうち『拾遺和語灯録』については、龍谷大学図書館所蔵元亨版の拾遺篇によって確認することができる。すなわち巻中には『登山状』『示或人詞』『津戸三郎へつかわす御返事』(一〇月一八日付)(九月二八日付)(四月二六日付)『示或女房法語』、巻下には『念仏往生義』『東大寺十問答』『御消息』『ある人のもとへつかわす御消息』『熊谷の入道へつかわす御返事』『ある時の御返事』『往生浄土用心』の計一三篇が所収される。『拾遺漢語灯録』は恵空本系に伝承がなく改変箇所が多い義山本である正徳版に拠るのみであったが、滋賀県甲賀市水口町大徳寺に所蔵する大徳寺本『拾遺漢語灯録』の記述が中世の形態を伝えるものとして確認されるようになった。正徳版では『三昧発得記』『夢感聖相記』『浄土随聞記』『臨終祥瑞記』『答博陸問書』、大徳寺本では『三昧発得記』『夢記』『浄土宗見聞』『臨終記』『御教書御請』と題して対応する五篇が所収される。


【参考】中野正明『増補改訂法然遺文の基礎的研究』(法蔵館、二〇一〇)


【参照項目】➡漢語灯録和語灯録拾遺黒谷上人語灯録


【執筆者:中野正明】