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東大寺十問答

提供: 新纂浄土宗大辞典

とうだいじじゅうもんどう/東大寺十問答

法然述。東大寺再建で有名な重源が、念仏往生に関する一〇箇条の質問を行い、それに法然が答えた文献とされる。『拾遺和語灯録』下、所収。道光は建久二年(一一九一)三月一三日に行われた問答の記録であると注記する。これは東大寺での「浄土三部経」講説の翌年にあたる。なお、第九問答に「去年こぞ申候き」とあるが、それは内容からして「三部経」講説とは別のものを指すと考えられる。一〇の質問とは以下の通り。①釈尊一代の教えを全て浄土宗おさめるのか、②正行・雑行共に本願か、③三心具足念仏は必ず往生するのか、④念仏のときは必ず念珠を持つべきか、⑤大仏を仰げば往生できるのか、⑥有智であるが道心が普通程度の人と、無智であるが道心が強い人といずれがよいのか、⑦念仏申す人は必ず摂取されるのか、⑧摂取の光明は一度照らせばその利益が退することはないのか、⑨十念一念往生というのは平生か臨終か、⑩来迎の仏は報仏か。なお本文献には、辺地往生、智具・行具の三心一体三宝など、他の法然法語には見られない概念が少なからず見られることなどから、偽撰の可能性も考えうるが、良暁浄土述聞鈔』(浄全一一・五三九下~四〇下)や聖冏浄土述聞口決鈔』(浄全一一・六二一上)はこれを真撰として扱っている。


【所収】聖典四、昭法全


【参考】岸信宏「東大寺十問答に就て」(『仏教文化研究』一〇、一九六一)、阿川文正「『東大寺十問答』攷」(『仏教史研究』六、一九七二)


【参照項目】➡重源行具の三心・智具の三心三宝


【執筆者:安達俊英】