起龕
提供: 新纂浄土宗大辞典
きがん/起龕
葬儀式の脇導師の作法。鎖龕の次に行う。禅家では家から棺を送り出すことをいい、出棺を意味する。『摩訶摩耶経』に、摩耶夫人が天より下降し棺前に至ると棺自ら開くという故事(正蔵一二・一〇一三上)があり、浄土宗では釈尊葬送の際、摩耶夫人が兜率天より降臨し、釈尊が金棺を開いて起き上がったという故事により、閉ざした棺を開く意味で起龕を行う。起龕の作法は①自席より中啓を持って導師の前まで進み、鎖龕と起龕の両脇導師が導師に対して問訊する。②中啓を持ち、祭壇の前に進み、中啓を机上に置き、焼香・合掌意念する。③左手に金剛印を結び左腰にあて、右手で中啓を香炉に薫じ、左斜め後方に三歩下がる。④左手に金剛印を結び左腰にあて、中啓で一円相を画く。⑤起龕の一句を唱える。一例として「鳥は華やかにして珠の光を転じ 風は好くして 楽の声を調ぶ 作麼生か 起龕の一句 開彼智慧眼 滅此昏盲闇」。中啓を襟に挿し、十念(やや低唱)する。⑥祭壇の前に進み、合掌意念。⑦導師の前まで下がり、問訊して自席に戻る。
【参照項目】➡鎖龕
【執筆者:渡辺俊雄】