摩耶夫人
提供: 新纂浄土宗大辞典
まやぶにん/摩耶夫人
釈尊の母の名前。摩耶はⓈⓅMāyāを音写したもので、本来は「幻」を意味する。シュッドーダナ王(浄飯王)の妃であるため、夫人と呼ばれる。ヒマラヤ山麓に流れるローヒニー川をはさんで、西にはシャーキャ族の住むカピラヴァスツがあり、その東にはコーリヤ族が住むデーヴァダハがあったとされるが、摩耶夫人はコーリヤ族出身の娘であった。両部族は昔から姻戚関係にあったとされ(釈尊のもとに嫁いだヤショーダラーもコーリヤ族出身)、摩耶夫人もシュッドーダナ王のもとに嫁いだ。摩耶夫人は白象が体内に入る夢を見て釈尊を身籠もったとされる(託胎霊夢)。出産を目前に里帰りする途中、立ち寄ったルンビニー園で釈尊を出産するが、出産後一週間で摩耶夫人は亡くなった。伝説によれば、死後、摩耶夫人は三十三天に生まれ変わり、その母のために、悟りを開いてから釈尊は三十三天に昇って母に説法したと言われている。
【執筆者:平岡聡】