流れ灌頂
提供: 新纂浄土宗大辞典
ながれかんじょう/流れ灌頂
産死者や水死者の供養のために行う水辺での儀礼。川施餓鬼の一種。流水灌頂・流幡灌頂ともいう。塔婆や幡を海辺や水辺に建立または流すことによって、水中の魚類に至るまで福を得、流れてこの水を飲むものさえ灌頂の功徳を受けるとされる。『諸回向宝鑑』(三・二五オ)には、七本塔婆を一具としたもの七流を河岸から二間のところに並べ、六字名号を中心に、その左右には『無量寿経』『華厳経』『悲華経』『観念法門』などの経釈を割書きして図示し、施餓鬼会を修すとある。こうした例は、現在も高野山御廟橋畔などで見られ、また地蔵尊の御影を川や海へ流して回向祈願する「地蔵流し」も、これに類するものである。なお、略式の作法として、四角い小さな白布に経文などを書し、これに水を灌ぐ習俗も、塔婆や経木に水向することに通ずる儀礼である。
【参考】柳田国男『葬送習俗語彙』(国書刊行会、一九七五)、五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)
【参照項目】➡川施餓鬼
【執筆者:清水秀浩】