十方浄土
提供: 新纂浄土宗大辞典
じっぽうじょうど/十方浄土
東・西・南・北・上・下・四維(東南・西南・東北・西北)の十方にある浄土。すなわち、あらゆる方角にある仏の世界。西方極楽世界、東方妙喜世界、東方浄瑠璃世界、西方無勝世界などが知られる。『観経』では、韋提希の請に応じて釈尊が「十方諸仏の浄妙の国土」(聖典一・二九〇/浄全一・三八)を現した。道綽は『安楽集』に「十方の浄土みなこれ浄にして深浅知り難しと雖も、弥陀の浄国は乃ちこれ浄土の初門なり」(浄全一・六八五上)といい、善導は『観経疏』に「十方の仏国を見るに、並にことごとく精華なれども、極楽の荘厳に比せんと欲するに、全く比況に非ざる」(聖典二・二二四/浄全二・二八上)といい、法然は『選択集』六に「十方の浄土は機縁浅薄にして、西方浄土は機縁深厚なり」(聖典三・一三四/昭法全三二六)と述べている。このように、浄土宗では極楽浄土の優位性を示す際に用いられることが多い。
【資料】『十方随願往生経』一一(正蔵二一・五二九下)、『安楽集』下(浄全一・六九五上)、『群疑論』五(浄全六・六四下~五上)
【参照項目】➡妙喜世界、浄瑠璃世界、無勝世界、十方浄土極楽浄土の勝劣
【執筆者:木村迎世】