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十方浄土極楽浄土の勝劣

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じっぽうじょうどごくらくじょうどのしょうれつ/十方浄土極楽浄土の勝劣

東・南・西・北、四維(東南・西南・東北・西北)、上・下の十方に存する諸仏の浄土阿弥陀仏西方極楽浄土とどちらが勝れ、しかも往きやすいか(勝劣難易)を比較すること。大乗経典では『兜沙経』『十方随願往生経』をはじめ十方浄土を説くが、浄土教ではそれらより特に西方極楽浄土を選ぶ。その理由について道綽は『安楽集』上の第二大門において、「一には衆生の意を専らならしむるが故に、二には浄土の初門なるが故に、三には穢土と境次相接するが故に」(浄全一・六八四下~五上)という三つの理由をあげ、また同下の第六大門では「一には観音、勢至この界に於いて発心するが故に有縁なり、二には西方は法蔵選択浄土なるが故に、三には韋提別選の浄土なるが故に」(浄全一・七〇二)という三つの理由をあげて、極楽を最勝とする。善導は『観経疏序分義に「すべて十方の仏国を見るに、並にことごとく精華なれども、極楽荘厳に比せんと欲するに、全く比況ひきょうに非」(聖典二・二二四/浄全二・二八上)ずと述べる。懐感は『群疑論』五に十方浄土への往生を勧めず、ただ極楽への往生を勧めるのは「一に説あれども勧ることなし、二に勧ることあるも機少なし、三に勧文具さならず」(浄全六・六四下)とする。中国で十方浄土への往生を主張したのは『群疑論』三に『三階集録』の説を引き「今より千年已後の第三階の衆生は唯だ普真普正の仏法を行じて十方の仏国に生ずることを得べし、乃至、今無量寿経等は即ち別真別正にして是れ第二階の仏法なり」(浄全六・四三下)というのによれば三階教徒である。日本では源信の『往生要集』にも十方・兜率・西方の三浄土を比較して西方の勝れた状態を説き、法然は『選択集』六に十方西方二教住滅の前後として「謂く十方浄土往生の諸経、先に滅す。故に〈経道滅尽〉と云う。西方浄土往生のこの〈経〉ひとり留まる。故に〈此住百歳〉と云う。まさに知るべし。十方浄土機縁浅薄にして、西方浄土機縁深厚なり」(聖典三・一三三/昭法全三二六)といい、また『一紙小消息』に「十方浄土多けれど西方を願うは十悪五逆衆生の生まるるゆえなり」(昭法全四九九)という。聖光もまた『西宗要』に、十方西方を対比して西方が勝れていることを説く。


【参照項目】➡浄土の勝劣


【執筆者:金子寛哉】