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浄土教美術

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じょうどきょうびじゅつ/浄土教美術

浄土教教義にもとづく造形芸術。本来はそれぞれの仏・菩薩浄土が説かれるが、大部分は阿弥陀信仰に伴って生じたものをいう。天台および南都で花開いた日本浄土教は、平安・鎌倉時代に空也源信法然親鸞一遍らを軸として隆盛し、美術史上比類のない優れた作品を生み出した。建築では、極楽浄土の美を具現化した平等院鳳凰堂(国宝)や中尊寺金色堂(国宝)、浄瑠璃寺九体弥陀堂(国宝)などが代表的遺構である。絵画の主流は浄土変相図来迎図で、前者の中では『観経』にもとづく当麻曼陀羅観経変相図)が有名。この観経変相図から九品往生のみを発展させたのが来迎図で、平等院鳳凰堂の九品来迎図はその先駆例である。来迎図は有志八幡講十八箇院の「阿弥陀聖衆しょうじゅ来迎図」(国宝)、金戒光明寺の「山越阿弥陀図」(国重要文化財)および禅林寺の「山越阿弥陀図」(国宝)、知恩院の「阿弥陀二十五菩薩来迎図早来迎)」(国宝)など多彩な図様を有する。これらは中国唐・宋代の浄土教美術と相互に影響しながらも、日本の独自性が認められる。また、鎌倉仏教のもとでは祖師の彫像や絵伝も多く作られ、伝法絵解きに用いる六道絵二河白道図相承宗教体験を形象化した二祖対面図なども広く流布した。


【参考】石田一良『浄土教美術 文化史学的研究序論』(ぺりかん社、一九九一)、中野玄三『日本仏教美術史研究』(思文閣出版、一九八四)、同『続日本仏教美術史研究』(同、二〇〇六)


【参照項目】➡阿弥陀堂当麻曼陀羅阿弥陀来迎図


【執筆者:太田亜希】


石田一良著。昭和三一年(一九五六)一月、平楽寺書店刊。著者は日本文化史・思想史の研究者として『文化史学・理論と方法』『形と心—日本美術史入門—』など数多くの著作を残している。本書は、著者自身が幼少時から憧憬の対象としていた浄土教美術に関して、そのライフワークを一書にしたもの。研究手法はいわゆる美術史学としてではなく、浄土教の思想と美術の関係についてどこまでも文化史的方法に基づき、両者の内面的関係を追求することに徹底している。平成三年(一九九一)三月、ぺりかん社より再刊。


【執筆者:多川文彦】