二河白道図
提供: 新纂浄土宗大辞典
にがびゃくどうず/二河白道図
善導の『観経疏』散善義に説かれる比喩を図化したもの。東岸を娑婆世界、西岸を西方浄土とし、その間に白道を配する。白道を挟んで一方は火の河、もう一方は水の河をあらわす。東岸には発遣の釈尊を中心に群賊・悪獣などを描き、西岸には来迎の阿弥陀仏を中心とした極楽世界および諸仏を描く。そして、白道には今まさに渡ろうとする人物(往生人)を配する。この絵図は、『観経疏』の「また一切の往生人等に白す。…今二尊の意に信順して、水火の二河を顧みず、念念遺るること無く、かの願力の道に乗じて、命を捨てて已後かの国に生ずることを得、仏と相見せば、慶喜何ぞ極まらんというに喩う」(聖典二・二九六~九/浄全二・五九下~六〇下)との文に基づき、これを引用して法然が『選択集』第八三心篇で念仏の意を説いたことにより成立をみるが、平安時代中期から全国的に流布した浄土信仰も相俟って、鎌倉時代以降多数制作された。その用法としては、浄土教の説教に伴う絵解きなどがあげられ、布教のための重要な仏具の一つであった。現在、結縁五重相伝要偈道場の際に壁面等に掛けて使用される。現存する最古の作例は、京都府長岡京市光明寺所蔵(国重要文化財)のもので、鎌倉時代の作例。
【参考】河原由雄「作品解説 二河白道図」(奈良国立博物館編『鎌倉仏教 高僧とその美術』図録、一九九三)、浜田隆『来迎図』(『日本の美術』二七三、至文堂、一九八九)【図版】巻末付録
【参照項目】➡二河白道
【執筆者:藤田直信】