性戒・遮戒
提供: 新纂浄土宗大辞典
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しょうかい・しゃかい/性戒・遮戒
性戒は、性重戒、性罪戒、主戒とも呼ばれ、遮戒は息世譏嫌戒、離悪戒、客戒とも呼ばれる。性戒を犯す罪を性罪、遮戒を犯す罪を遮罪という。性戒とは、行為そのものが本性として罪過であり、その行為を犯すことによって三途の生存が結果する。したがって、釈尊が戒として定めて制止しようとしなくても、おのずからなしてはならない行為として定められた戒である。遮戒とは、本来的には罪過ではなくても、種々の事情から釈尊が制止して初めて戒の条項として制定された戒(元照『四分律行事鈔資持記』上一上、正蔵四〇・一六六下)。五戒の中では、不殺生、不偸盗、不邪婬、不妄語が性戒、不飲酒が遮戒である。飲酒は、それによって放逸となり他の戒を犯す原因となるので禁止されるが、それが性罪ではなく遮罪とされるのは、酒は治療のために酔わない程度に飲むことが可能であって、その点が染汚心のみによって犯される性罪とは異なるからであるという(『俱舎論』一四「業品」正蔵二九・七七中)。以上の性戒・遮戒の区別を受けて、聖冏は『二蔵義見聞』七で、「その体、本より罪あるを性罪と名づく。殺生等の如きこれなり。罪縁によりてこれを制するを遮罪という。飲酒等の如きこれなり」(浄全一二・五〇九下)という。また、『糅鈔』四二に、「酒は性罪に非ざれども、仏教に遮制して飲ましむことを許さず、遮に違うは、罪を得るが故に遮罪と名づく。殺生等の如くんば、未だ戒を制せざる時も、聖は必らず犯せざるが故に性罪と名づく」(浄全三・九二四下)とする。この他、『正法念処経』五九には、戒を性重戒と離悪戒に二分し、殺生・非梵行・偸盗・妄語を性重戒とし、それ以外を離悪、すなわち遮戒とする(正蔵一七・三四九上中)。また『大乗義章』一〇では十悪の内の身口の七を性悪(性罪)とし(正蔵四四・六六三下)、『摩訶止観』四には、これに飲酒を加えて性戒を八種とする(正蔵四六・三六上)。
【執筆者:齊藤舜健】