譏嫌戒
提供: 新纂浄土宗大辞典
きげんかい/譏嫌戒
世間からのそしりを止めるために制定された戒。息世譏嫌戒ともいう。性重戒の対語。具体的な内容としては、蓄財や五辛を食べることの禁止などがある。出典は大乗の『涅槃経』で、『北本涅槃経』一一に「二種の戒あり。一つは、性重戒。二つは息世譏嫌戒なり。…菩薩摩訶薩はかくの如き遮制の戒と性重戒等を堅持すること、差別なし」(正蔵一一・四三二下~三上)とあり、菩薩は性重戒と息世譏嫌戒を守るべきことが説かれ、またここでは、譏嫌戒が遮制の戒と言い換えられている。『俱舎論』には「犯戒および遮を離るるを戒と名づけ、各に二あり」(正蔵二九・九七中)とあり、この戒の分類は『涅槃経』と同種のものといえる。『俱舎論』にいう遮とは「遮とは、謂わく、遮するところの非時食等なり。性罪には非ずといえども、仏が法および有情を護らんがために、別意をもって遮止せるものなり」(同)とされ、それ自体は罪ではないが、仏教の教えや人々を護るために禁止されたものである。法然が『往生大要抄』のなかで「菩薩の譏嫌戒とて人の譏になりぬべき事をばなせそ、とこそ誡められたれ」(聖典四・三〇九/昭法全五六)というのも、これと同様のことであろう。
【資料】『南本涅槃経』
【執筆者:石田一裕】