五重自証門伝
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごじゅうじしょうもんでん/五重自証門伝
浄土宗僧侶の自覚を証得するための五重伝法をいう。入門した浅学の者が「安心」(信仰)を確立するための伝法。「浅学相承」ともいう。「宗脈化他門伝」「碩学相承」に対する伝法用語。この五重伝法を受けることによって僧侶の資格を得る。道誉貞把と感誉存貞の道感二師は箇条伝法を制定して、五重と宗脈を二回に分けて相伝する略式の伝法を行った。貞把は五重を五箇条とし、存貞は五重を九箇条とした(林彦明『五重大会勧誡講録』五四、知恩院、二〇〇九)。聖冏の『五重指南目録』の五十五箇条の口伝のなかから浅学者のために選択したが、主として法儀に関するものが多く、宗義行相に関するものが少ない。寛文一一年(一六七一)の檀林会議で、五重は入寺して修学五年、宗脈は一〇年と定めた(「山門通規」『増上寺史料集』三、八)。この感誉流九箇条の伝目中に、第三「五重自証門伝」がある。『吉水瀉瓶訣』二には自証門といい、自証往生の伝・自証成仏の伝ともいい、第一塗香、第二坐具、第三自証門、第四授手印、第五五通、第六十念、第七三種病人、第八未回向声聞、第九気息と配当されている(『伝灯輯要』八四五)。現行の伝宗伝戒道場では、五重自証門伝と宗脈化他門伝を伝授している。
【参考】鈴木霊真『浄宗伝法各流伝目集』(私家版、一九五二)、恵谷隆戒『浄土教の新研究』(山喜房仏書林、一九七六)、服部英淳『増上寺伝法勧誡講録』(増上寺、一九九一)
【執筆者:西城宗隆】