仏式結婚
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぶっしきけっこん/仏式結婚
仏前での結婚式。仏前結婚式ともいう。新郎新婦が仏教徒・夫婦として共に生きゆくことを仏前で誓い合う式。帰敬式的な儀礼(灌頂・懺悔・授与三帰三竟など)に婚姻儀礼(行華・誓漿交歓・誓詞朗読)を行って成婚の式とした。浄土宗の特色は行華と日課勧奨を行う点である。行華とは、新婦が花七本を持って入堂し、新郎は新婦から五本の花を受け取り、新婦は二本の花を持って、共に仏前に進み花を献じて結婚の証とすること。また日課勧奨とは、戒師が新郎新婦に日課の念仏を勧めて、共に十念を称えることによって婚姻の成立とすること。荘厳は、本尊前に紅白の鏡餅を供え、紅燭を用いて松の立花などを献じる。別に壇を設けて両家の位牌を安置する。高座は外陣向きに設け、その前卓上に洒水器と、三方の上に数珠二連を用意する。高座前には新郎新婦の席(男右・女左)を設け、その前に小机を置きその上に香炉などを備える。三宝に帰依した仏教徒として身心を正しくし、互いに慈しみあい助け合う夫婦として共に生きゆくことを仏前で誓う。明治三五年(一九〇二)五月、曹洞宗来馬琢道が自ら仏教式婚儀次第を作成して挙式をした。同年八月、来馬の媒酌人を務めた梶宝順が浄土宗で初めての仏教式婚儀を行った。同四〇年五月、東仏教婦人会は中嶌観琇の校閲による『正因縁』を刊行して「仏教結婚式」を制定した。大正九年(一九二〇)二月、山崎弁栄は行華の原型と見られる分華を行い音楽法要の「正婚式」を挙げて『仏式結婚儀』を発行した。同一一年六月、千葉満定は『浄土宗法式精要』で「簡易結婚式例」を示した。昭和六年(一九三一)一〇月、『宗報』は式の典拠を上座仏教に求めて「仏式結婚式次(参考)」を発表した。同一四年一二月、『浄土宗法要集』は告諭(行華)と本堂内での誓漿交歓などを取り入れた結婚式を制定した。
【参考】『結婚式』(浄土宗、一九九九)
【執筆者:西城宗隆】