練供養
提供: 新纂浄土宗大辞典
ねりくよう/練供養
法会で行う「行列」の俗称。お練り・行列ともいい、列を組んで練り歩くことをいう。落慶式・晋山式はじめ遠忌・御忌大会等のときに行い、お練り・庭儀式ともいう。そもそも阿弥陀仏が二十五菩薩を伴って念仏する人を来迎引接する様子を具現化したもので、二十五菩薩の面をかぶって行道する儀式であった。奈良県當麻寺の聖衆来迎練供養会式・二十五菩薩来迎会はその例。極楽に見立てた本堂(曼陀羅堂)から娑婆堂へ行道するとき(来迎)は、天童を先頭にして、介添えに手をひかれた二十二菩薩、観音菩薩は蓮台を捧げて、勢至・普賢菩薩とともに体をゆり動かしながら来迎橋を渡っていく。そして、娑婆堂から本堂へ行道するとき(引接)は、観音菩薩の蓮台に中将姫の化身をのせて諸菩薩・僧侶とともに本堂(西方)に歩んでいく。これは中将姫の来迎・引接を模した「往生の儀礼」の行列である。落慶式等で行う集会所(中宿)から本堂への道中の練供養は、この聖衆迎接の儀式を模したものである。練供養に天童(稚児)が参列するときは、「稚児行列」と称することもある。「ねる歩」は歩行法の一つで、大名が殿中でお練り歩きすることをいい、ゆっくり行列することをお練りと称したという。なお、葬儀のときの行列(葬列)は、輿を蓮台として善の綱を持つ人々を聖衆として浄土に送る「往生の儀礼」としての行列でもある。また、芸能人が襲名報告の参拝で境内をゆっくり練り歩くこともお練りと称している。昭和三七年(一九六二)九月、八代目坂東三津五郎が浅草寺へ参詣し襲名報告を行ったときに「お練り」と称したのが最初。以後、お練りは歌舞伎の襲名行事の一つとなった。
【参考】伊藤唯眞「浄土宗の儀礼習俗・来迎引接の儀礼」(『伊藤唯眞著作集』三『仏教民俗の研究』法蔵館、一九九五)
【執筆者:西城宗隆】