中将姫
提供: 新纂浄土宗大辞典
ちゅうじょうひめ/中将姫
当麻曼陀羅の縁起にあらわれる人物。縁起によれば、藤原豊成の娘としてうまれ、篤く観音菩薩を信仰していたという。五歳の時に母を亡くし、豊成が後妻を迎えると、継母にうとまれ、一四歳で雲雀山へと逃れたという。後に都に戻った姫は、『称讃浄土経』の写経を行い、一六歳で尼となって當麻寺に入り法如と名乗った。やがて阿弥陀仏と観世音菩薩が尼に姿を変え姫の前に現れるなどの奇瑞を得、『観経』に基づいた曼陀羅を織り上げて極楽往生を遂げたといわれている。中将姫伝説は、『古今著聞集』『私聚百因縁集』などに収録されていることから一三世紀前半にはすでに成立していたと考えられている。また脚色され謡曲『雲雀山』、室町時代には読み物として『中将姫の本地』、江戸時代では説経節『中将姫の御本地』など多数が制作された。
【参考】日沖敦子『当麻曼荼羅と中将姫』(勉誠出版、二〇一二)
【執筆者:工藤美和子】