きずい/奇瑞
不思議な出来事のこと、またよいことが起こる前兆。奇瑞は、偉大な宗教者の節目となるような体験の前後に現れることが多い。そのような奇瑞を体験した人々は、それぞれ信仰を確固たるものとし、奇瑞を起こした宗教者を仰ぐようになる。『四十八巻伝』には、法然の誕生時に二流の白幡が飛んできて庭の椋の木に掛かったこと(巻一)や、往生の前後に多くの人々が不思議な体験をしたこと(巻三七)などが説かれている。法然の伝記には、このほかにも多くの奇瑞が説かれ、法然の周囲の人々はそのような体験を通して法然自身への帰依を深め、念仏往生への信仰を確固たるものにしたと考えられる。
【執筆者:長尾隆寛】