南山衣
提供: 新纂浄土宗大辞典
なんざんえ/南山衣
中国南山律宗の祖、道宣が制した袈裟の総称。浄土宗では七条袈裟の製式の一つとされ、主に顕色七条がこの形式にあたる。義浄の用いた天竺衣との製式の大きな違いは、環と修多羅の位置と形状である。南山衣は、胸前部分の浄端側に環を付け、全幅のほぼ中央辺り(左肩の位置)に修多羅を配するため、長く残る七条本体の左側部分を折り畳み、左腕に掛けて被着する。また天竺衣の環が、紐を輪にしたものであるのに対し、南山衣は円状の環を用いるのも特徴で、顕色七条の場合には、修多羅の結び方も定められている。『真俗仏事編』によると、南山衣の始祖道宣と、天竺衣の始祖である義浄は、袈裟の製式の違いに限らず、素材についての考えも相違し、道宣が蚕衣(絹の袈裟)には殺生の咎があるとして、絹の使用を戒めたのに対し、義浄は氎布(木綿などの布)に限るのは小乗有部の偏執であり、諸家の崇ぶ蚕衣を非法とすべきではないとして、絹の袈裟を認めている。また同書には、顕色袈裟即ち金襴衣は菩薩の荘厳衣であるから、大乗で用いることは差し支えないとも記している。
【資料】子登『真俗仏事編』(六・一ウ)【図版】巻末付録
【執筆者:熊井康雄】