葬送儀礼
提供: 新纂浄土宗大辞典
そうそうぎれい/葬送儀礼
人の死に対して人々が起こす一連の儀礼。葬式ともいう。葬儀式の儀礼構造は日本文化における葬送習俗、とりわけ祖先崇拝に根ざす仏教と民間習俗との相互作用からなる複合的なものである。このことは葬儀式の執行と葬送習俗との関係が相互補完の関係、すなわち葬儀式が葬送習俗に仏教的意味づけを与え、また葬儀式は葬送習俗によって支えられていることを意味する。近年の葬送習俗の変容は甚だしく、かつ急激的である。その変容は日本仏教の中核に位置する祖先崇拝そのものの変容に伴って生じたものである。祖先崇拝は「祭る者がやがて祭られる存在にかわる」ことを原則としている。すなわち、第一に先祖と死者(ホトケ)とが明確な区別がなされず連鎖一体的に扱われること。第二に、その連鎖において、死者の霊は年忌を経るにつれて個別的な性格を漸次失って没個性化し、子孫の供養を受けて浄化されて、一定時期をすぎると(三十三回忌ないし五十回忌の弔い上げによって)、祖霊化=先祖となるという構造的特徴をもつのである。
【参考】柳田国男「先祖の話」(『定本柳田国男集』一〇、筑摩書房、一九六二)、梅田義彦『日本宗教制度史』(百華苑、一九六二)、藤井正雄編著『葬儀を考える』(筑摩書房、一九九〇)、同『祖先祭祀の儀礼構造と民俗』(弘文堂、一九九三)、碑文谷創『葬儀概論』(表現文化社、一九九六)、伊藤唯眞・藤井正雄編『葬祭仏教—その歴史と現代的課題』(ノンブル社、一九九七)、『葬送のかたち—死者供養のあり方と先祖を考える』(『シリーズ・宗教で解く「現代」』三、佼成出版社、二〇〇七)
【執筆者:藤井正雄】