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ホトケ

提供: 新纂浄土宗大辞典

ホトケ

元来は仏陀を指す語であったが、日本では仏像慈悲深い人などとともに、死者をも意味する。仏教が日本に移入されて徐々に土着の民俗信仰と融合してゆく過程において、本来は覚者を意味する「仏」の語が、「ホトケ」「ほとけ」などと表記され、死者や死霊を意味するようになったが、このような例は仏教が流布した他の地域には見られない日本特有の現象である。覚者を指すほとけの語がなぜ死者を意味するようになったかについては諸説あるが、代表的な説として、日本固有の祖霊信仰が大きく影響したとする考え方がある。すなわち民間では死亡した直後の霊魂は不安定でかつ荒ぶる存在であるが、子孫たちが繰り返し儀礼を行い、祭祀を続けることで徐々に浄化され、やがて清らかな祖霊的存在に昇華してゆくと考えられていた。このような民俗的祖霊観と浄土教思想が習合することによって、死者を祀り、供養することで死者はやがて浄土に安住し、子孫たちを守護する存在になると信じられるようになり、その結果死者をホトケとよぶようになったものと考えられる。


【参考】柳田国男「先祖の話」(『柳田国男全集』一三、筑摩書房、一九九〇)、竹田聴洲『民俗仏教と祖先信仰』(東京大学出版会、一九七一)


【参照項目】➡祖霊


【執筆者:八木透】