捨子問答
提供: 新纂浄土宗大辞典
すてごもんどう/捨子問答
二巻。隆寛撰述とされる書。制作年時は不明であるが、本文中に『般舟讃』の引用がみえるので成立は『般舟讃』発見の年とされる建保五年(一二一七)より下る。仮名書きの、捨子と遁世僧による問答形式の書であり、上下巻にそれぞれ八つの問答が記されている。巻末には本書が念仏の初心者のために説かれた旨が記される。念仏と滅罪、諸行と念仏の勝劣、念仏の信心、念仏の相続等について記されている。本書は隆寛作とされるが、江戸期の真宗の了祥などは否定しており疑義がもたれている。ただし鈍根愚痴の者のために称名念仏を説き、多念相続をすすめて臨終業成を強調する側面は『源流章』の隆寛の念仏観とは符合し、凡夫に真実心がなく阿弥陀仏に帰する心を真実心とする隆寛の教学的特色もみえる。
【所収】続浄九
【資料】了祥『後世物語録』(真宗全書四六)
【参考】瓜生津隆雄「隆寛律師の著作に就て」(『真宗研究』一八、一九二八)、松本史朗『法然親鸞思想論』(大蔵出版、二〇〇一)
【執筆者:伊藤茂樹】