閑亭後世物語
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんていごせものがたり/閑亭後世物語
二巻。隆寛撰述とされるが、本文中に「先師隆寛」とみえることや隆寛門弟の敬日の法語が引用されることから長楽寺義の流れを汲む者の作と考えられる。成立年は不詳であるが、文永一二年(一二七五)に成立した『和語灯録』に本書の名がみえ、また『長西録』にはその名の記載はないことから鎌倉中期には成立していた。仮名書きの書で、内容は念仏往生に関する臨終平生・三心・一念多念等の問答が記されている。隆寛にみえる諸行の廃立が説かれず、数量念仏に基づいた臨終正念や諸行往生を容認しており、また融通念仏や生身仏について言及している。金沢文庫の隆寛撰述の古写本が発見されるまで、『捨子問答』『後世物語聞書』とともに隆寛教学を考察する上で重要な書物であったが、隆寛の撰述であることについては疑問視されていた。専修念仏関連の法語や高野聖の法語などの引用が多くみえる。古写本は現存せず、元禄五年(一六九二)の版本がある。
【所収】続浄九
【資料】了祥『後世物語録』
【参考】瓜生津隆雄「隆寛律師の著作に就て」(『真宗研究』一八、一九三三)、山上正尊「鎌倉長楽寺隆慶大徳と閑亭後世物語」(『無尽灯』二〇—八~二一—一二、一九一五)、松本史朗『法然親鸞思想論』(大蔵出版、二〇〇一)
【執筆者:伊藤茂樹】