観音授記経
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:21時点における192.168.11.48 (トーク)による版
2018年3月30日 (金) 06:21時点における192.168.11.48 (トーク)による版
かんのんじゅききょう/観音授記経
一巻。具名を『観世音菩薩授記経』といい、『観音菩薩得大勢至菩薩授記経』ともいう。曇無竭訳。異訳に施護訳『如幻三摩地無量印法門経』があり、チベット語のⓉ’phags-pa sgyu-ma lta-bu’i ting-nge-’dsin shes-bya-ba theg-pa chen-po’i mdoがあり、そこにサンスクリットの経典名ⓈĀrya-māyopama-samādhi-nāma-mahāyāna-sūtraが付されているが、梵本は現存しない。観世音菩薩が阿弥陀仏の入滅後、その位処を補うことを説く経典で、この説示は『平等覚経』三や『大阿弥陀経』上、『悲華経』三などに示される主旨とも一致する。本経においては阿弥陀仏が入滅した後、観音菩薩が七宝菩提樹のもとで正覚して、普光功徳山王如来と号するという。浄土教においては、阿弥陀仏がはたして入滅するのか否かが、その仏格を決定するものとして論議された。浄影寺慧遠、智顗等は入滅ありとしてその仏格を応身と判じて低位に見、道綽は『安楽集』上において、たとえ滅度を示すといっても、それは本来の滅度ではなく、一時的に姿を消す休息隠没のことであって『宝性論』に示す報身の五種の相の一つであるとし、阿弥陀仏が報身であって、法性随順の最高価値を有するものとしている。
【所収】正蔵一二
【参考】望月信亨『中国浄土教理史』(法蔵館、一九七五)、齊藤舜健「『観世音菩薩授記経』所説の阿弥陀仏の入滅」(印仏研究四四—二、一九九六)
【参照項目】➡阿弥陀入滅
【執筆者:粂原恒久】